VoiceInk は日本語で使えます。公開されているテンプレートから自分で組み立てれば、無料のまま使えます(本家の配布版は試用のあと購入の案内があります)。ただし入れて最初に話したとき、日本語で話したのに英語の文字で出ました。原因は、最初の案内が日本語に対応していない音声認識のモデルを自動で選んでいたこと。設定で Whisper に切り替えて直りました。VoiceInk を日本語で使えるか、お金がかかるのかを知りたい Mac の人に向けて、つまずいた所と直し方を順に書きます。
福岡で AI を使った仕事の仕組みづくりをしている和田祐輔です。私が入れた理由は、打つより話すほうが速いからです。音声入力はこれまでも使っていましたが、精度もスピードも物足りませんでした。
私は Claude Code を、Orca というアプリの中で使っています。Orca は、Claude Code や Codex などの AI エージェントを並べて動かせる、無料でオープンソースのアプリです(公式)。Claude Code を Claude のデスクトップアプリで使っている人も、同じように使えます(私も試しました)。Orca では、ほかのアプリのショートカットを止める macOS の仕組み「セキュアキーボード入力」が働かないことを、約1時間の記録で確かめました。Orca を操作していた間の1,035回は、すべてオフ。
無料で作ると決めた理由
オープンソースの音声入力アプリ VoiceInk を日本語向けに直したテンプレートが、GitHub で公開されているのを知りました。「OK じゃあ入れようか」と決めて、このテンプレートから作っています。
声を文字にするのは、Mac の中で動く無料の Whisper(large-v3-turbo)。有料のクラウドの音声認識(Soniox)も選べますが、声が Mac の外に出ない点も考えて、選んだのはこちらです。
組み立ては、Claude Code に任せました。待ち時間を入れて約3時間で使えるようになり、費用は0円です。
日本語を話したのに、英語の文字で出た
初めてアプリを起動すると、最初の案内が始まります。この案内が自動で選んでいたのは、Parakeet V3 という音声認識。英語とヨーロッパの25言語向けのモデルで、日本語は入っていません。だから、日本語で話した声が英語の文字になりました。
直し方は、モデルを Whisper の「Large v3 Turbo」、言語を Auto にしたこと。Whisper にも英語専用のモデルがあるので、選ぶのは名前に (English) が付いていないもの。アプリの画面に日本語は無く、私は英語のまま使っています。話した日本語は、そのまま日本語の文字になります。
Groq の鍵は要らない
案内の途中で Groq の API キーを求められますが、これは文字にした後に AI で文章を手直しする機能のための鍵。音声入力そのものには要りません。「Set It Up Later」で飛ばしても、そのまま使えています。
Xcode・署名・Metal Toolchain
組み立てには、つまずく所がいくつもありました。作業の大半は AI がやり、私が手を動かしたのは次の数か所です。
- Xcode の入手と、利用規約への同意
- 署名用の証明書を作る画面。種類の初期値が「S/MIME(メール)」だったので、「コード署名」に変えました
- 鍵の許可
- アプリの中の設定
AI がやった所は、次のとおりです。
- 土台のコードが本家 VoiceInk と同じ中身かを、同じ版と突き合わせて確認。テストは125件が全部通りました
- Xcode に macOS 用の部品しか入っておらず、音声認識の部品 whisper.cpp は macOS の分だけ抜き出して組み立て
- CMake が無かったので、Homebrew で導入
- 1回目のアプリの組み立ては「Metal Toolchain が無い」で失敗。838.9MB の追加部品を入れて、2回目で成功(4分51秒)
- 自分で作った証明書は macOS に「信頼されていない」扱いにされ、組み立ての手順が使ってくれない。署名し直しのコマンドを手作業で実行
文字にする処理は約1秒
アプリの履歴で測りました。今日完了した20件から、Whisper に切り替える前の英語の2件と、時間が残っていない1件を除いた17件です。
文字にする処理にかかった時間は、中央値1.21秒(1.02〜2.73秒)。録音は2.7〜31.2秒で、31秒話した分の処理も1.5秒ほどです。
辞書で聞き間違いを減らす
1回目に話した文の中の「Claude Code」は、「クロドコード」と出ました。間違えたのは、名前の部分だけ。
辞書には、仕事でよく口にする言葉を27語と、「クロドコード」を Claude Code に直す置き換えを入れました。書き込んだのも AI で、テンプレートの辞書用ファイルに書くと、アプリが取り込みます。
2回目は、別のカタカナ「クロードコード」で出ました。その形も、置き換えに足しています。
短い言葉の置き換えは入れていません。たとえば「空」を置き換えると、「空き容量」までおかしくなるからです。
無料の Whisper の弱い所と、使い続ける理由
無料の Whisper は、人や製品の名前に弱いです。これまで使っていた音声入力とも Mac 標準の音声入力とも並べて測っていないので、正確さは大きく変わらない可能性があります。
それでも、無料のまま得られるものがあります。辞書と置き換えを育てられること、「えーっと」が消えること、右 Command 1つで、ふだんの入力欄に同じように入れられること(ショートカットが止まるターミナルなどは除く)、ネットが切れても使えること。正確さを上げるなら有料の Soniox もありますが、私は「まあ無料でいいや」と判断しました。
聞き間違いは AI が文脈で読み替え、新しい形を見つけたら辞書にも足します。辞書を整えるのも AI 任せです。
当社のAI活用の支援では、こうした仕組みを仕事に入れるお手伝いをしています。